素晴らしいとは言い難いデンマーク料理でしたが、コペンハーゲンで美味しい、そして興味深い日本料理店に出会ったので紹介したいと思います。
Bento(ベントウ)
★★★★
Helgolandsgade 16
コペンハーゲン中央駅徒歩2分
1人で行ったところ、4席あるカウンターに案内されました。寿司カウンターです。せっかく目の前で大将が握ってくれるので、寿司を注文することにしました。
握りのセットを注文。実は北欧なのだから北海の新鮮な魚介類を味わえるに違いないと信じ込んでたのんだのですが、大将と話してみたところ、サーモン、エビをのぞいて全ての食材はフランクフルトから空輸しているとのこと。というのもデンマークでは、生の魚介類を店で出す場合、最低24時間冷凍処理しなければならないそう。ところが寿司ネタとして味を損なうことがないほど急速に冷凍処理を施す冷凍庫がなかなかデンマークでは見付けられないので、エビ、サーモンといったそれほど急速冷凍が必須でないネタを除いては地元産を使うことができず、空輸に頼らざるを得ないとのことだったのです。
まあそんな裏事情はさておき、とても美味しいお寿司をいただくことができました。やっぱり地元ネタのサーモンが脂が乗って抜群でしたが、他もまあ海外で食べる寿司としては十分及第点に達していたように思います。特に、シャリが良かった。酢加減そこそこに少し甘味が強いのが僕好みでした。
ということで、握りだけでは飽き足らず、追加注文をすることにしました。まずは美味しかったサーモンの炙りバージョン。ただでさえ脂が乗っているサーモンが、炙られることによってとろける程になりました。旨い!ただ、あえて提言するとしたら、少なくとも日本人向けにはマヨネーズ、照り焼きタレ、高菜のトッピングは不要かなと。十分にネタとシャリで美味しいので、小細工はいりません。
そしてこちらが、大将に是非にと勧められたエビフライ巻。意外や意外、これが結構美味しかったのです。いかにも創作寿司といった趣きなのですが、エビフライ、きゅうり、ネギが巻かれ、ゴマがトッピング、そしてなんとウナギ蒲焼のタレとマヨネーズで味付けされていました。濃い目のタレがエビフライと甘めのシャリによくマッチ。日本ではまず見かけなさそうな組み合わせだなあと思いながら、舌鼓を打ったのでした。
ということで大満足をした「Bento」だったのですが、この店の大将と結構話し込みました。両親がコペンハーゲンで出会いそして大将はコペンハーゲンで生まれたこと、従って成人するまではまともに日本に住んだことがなかったこと、でも向学のために日本に20歳過ぎで渡ったものの生活習慣や文化の壁で挫折しそうになったこと、自分の意見を率直に言うことがデンマークでは普通なのに日本では非常識であるように取り扱われて沈んでしまったこと、それでも料理の先生の家に住み込んで何とか一人前になろうと頑張ったこと、今はフィンランド人のお嫁さん(美人らしい!)をもらい子供も1人生まれて店を頑張って切り盛りしていること、などなど、大将の身の上話をたくさん聞かせてもらったのでした。まるでドラマのような話ですが、日本人の両親の元に生まれたもののまるで日本人らしく育てられなかった、というよりも育てられる環境にいなかった、そういう人が今異国で日本料理店を営んでいることが興味深く思われました。